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他人の努力が水の泡になる、その原因が自分だった、なんて状況はごめんだった。
陽香の、半ば妄想のようなその決断を聞いて、のんきな母は「だったら4年制の大学に行けばよかったのに」と溜め息をついた。
陽香もそう思ったが、高校3年生の時には、また4年も勉強をするのかと思ったらぞっとしたのだ。まったく後悔というのは、何度思い知ろうと先には立ってくれないものだった。
陽香の生まれた織部の家は、世間一般の常識というものがことごとく通用しない、そういう類の家だった。旧家と言うほどでもないが、他人から見ればおそらくそう呼ばれるのだろう。
18歳上の兄・克行が早くに家を出てしまったため、陽香は実質跡取り娘、ということになる。
けれど本家というものはもっと田舎に存在しているし、その本家の次男坊である父親は、克行や陽香に家督という古臭いものを強制するつもりはないらしかった。
最近面倒なことといえば、兄嫁である美園が次々と見合いの話を持ってくるくらいで。
その見合いにしても、断る方便だけがうまくなっていく。
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