トリィの決めたコト

2/4
前へ
/14ページ
次へ
「トリィ、お前は最高のパートナーだぜ」  ジンを3本ほど空けたダンテが、低い声で言った。  悪魔の耳でなければ聞き取れなかっただろう。  わたしは返事に変えて、片方の眉を上げてみせた。  ダンテがそれをどう取ったのかは、判らない。  ダンテはグラスを――乾杯でもするように――軽く上げると「本当だぜ」と言った。 「飲み過ぎね」 「ああ、そうかもな」  珍しく素直なダンテにわたしは目を瞬いた。  いつもと違う。  何かを言おうとしている男の口を軽くしてやるために、受話器を外して机の上に置いた。  わたしの意図を察したのか、ダンテが優しい笑みを口元に浮かべた。  本当はシャイで照れ屋な自分を、軽薄な言動とニヒルな笑いで隠している男が時折見せる、本心を現した笑顔に鼓動が少し早まった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加