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「お前は本当にいいパートナーだぜ」
ダンテが繰り返す。
「飲み過ぎよ。さっさと寝たら?」
ふらつく足で立ち上がったダンテは「受話器、戻しておけよ」と、言い残して奥のドアへ消えた。
カラリ、と氷がグラスの中で音をたてた。
グラスに付いた水滴に指で触れると、流れて机の上に出来た水溜まりを揺らめかせた。
そのまま指を滑らせて、机に水のラインを引いてみる。
大した意味は、無い。
ただ、この事務所の中にあるものは、あの男の一部というだけ。
わたしの決心した事を聞いたダンテがなんと言うか、目に浮かぶようでクスリと笑ってしまった。
どんなに嫌がっても、年で足腰の立たなくなったダンテにわたしを退ける力が残っているとは、思えない。
「天寿?を全うするまで、わたしが守るわ。
ふふっ。介護――下の世話だって大丈夫よ――の勉強しておくわ」
パートナーってずっと一緒にいるものでしょう?
「わたしの幸福(シアワセ)の邪魔はしないのよね、ダンテ?」
受話器を戻すと小さく、チンと音がした。
―fin―
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