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2話 分かれ道
「本当にこんなところに、キャンプ場があるんですか?」
わたしは、車を運転しているA先生に、じれったくなって聞きました。
ここは、F県のある山道で二人はこの日、夏休みに行われる林間学校の下見に、春休みを利用してきていたのでした。
「もうじきですよ。もうじき・・・」
さっきからA先生の返事は、そればかり。同じ言葉の繰り返しです。
もう一時間近く走っているのですが、目的のキャンプ場は気配もありません。
そればかりか、民家すら見かけません。もう夕方です。
あたりもだんだん暗くなってきました。
車は、だんだん山のさびしい道にさしかかってきました。
「おかしいなあ・・・。このへんだと思ったんだけどなぁ・・・。前に一度きたことがあるんですよ。あいにくこの車、ナビがないんですね。」
A先生は、つぶやきました。どうやら本格的に道に迷ったようです。
「こんな所で野宿はいやですよ。A先生」
わたしは冗談めいて言いましたが、このままいくと本当になりそうだったので、内心ひやひやです
「おっ!タバコ屋があるあそこで道を聞こう!」
突然、A先生が前方を指差しながら大きな声を上げました。
その方向を見ると確かに小さな古びたタバコ屋があったのです。
車を止め、わたしとA先生は、タバコ屋の入り口に行きました。でも店は閉まっていました。
「すみません。誰かいますか?すみません!」
二人は、ガラス戸を何回か叩きました。
すると中からぬうっと誰かが出てきました。骸骨のように痩せていて、青白い顔をしたおじいさんです。
「すみません。道に迷っちゃって・・・・。このあたりに、猫ヶ岳キャンプ場ってありますか?」
わたしがそう言うと、
「この先の分かれ道を左だよ・・・・。」
おじいさんは、ぶっきらぼうに小さな声でボソッと答えました。
わたし達はお礼を言い、さっそくこの山道をさらに進む事にしました。
もうすっかり夜になってしまい、周りは真っ暗です。ライトに照らされた木のシルエットが無気味です。
さっきのタバコ屋から二キロほど行った時でしょうか、目の前に二股になった道が見えてきました
「このことですね。分かれ道って。たしか左でしたよね。A先生。」
「うん。左、左・・・と。」
A先生は、ハンドルを切りました。と、そのとき
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