2話 分かれ道

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あの山道には、おじいさんとおばあさんがタバコ屋をやりながら、二人で住んでいたそうです。 三年前の春のある日、おばあさんは山菜をとりに出かけました。 その年はいつもより山菜が多く、おもしろくなったおばあさんは夢中でとっていました。 そして、あまりに夢中になり過ぎ、崖の方にどんどん近づき、足を滑らせてしまい、崖から落ちて亡くなったそうです。 そのおばあさんが亡くなった場所というのは、どうやらわたしたちが危うく落ちそうになった所のようです。 それからあまりの悲しみに、おじいさんは病気になってしまいました。 看病してくれる家族もなく、おじいさんは、やがて病状が悪化して、誰にも気づかれずにひっそりと息をひきとったそうです。 わたしたちは、その話を聞いてぞっとしました。 じゃあ、さっきわたしたちが見たおじいさんは、誰だったのでしょう? 心の中がしっくりしないまま、その晩は、猫ヶ岳キャンプ場に泊まりました。 翌朝、どうしてもこの目で確かめてみたくて、わたしたちは、昨日の夜おじいさんと出会った山道の途中のタバコ屋に行くことにしました。 朝の日差しをあび、見通しもよく、昨日の夜とうって変わって、車は明るい山道を進みます。 あの分かれ道も確かにありました。 ところが、いくら探しても、タバコ屋は見つからないのです。 ただタバコ屋があったらしいその場所は、草が生い茂り、空き地になっていました・・・・・・・。
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