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一座の人々は、花子を元気づけようと、色々と気を使ってくれた。
しかし、花子には、それがかえって辛かった。
知らない人の前に出るのも、限りない苦痛になった。
悲しみを隠して愛想よく振舞うのも、うんざりだった。
名声は、疎ましいものに変わった。
心の中に、ぽっかりと穴が開いたようで、何をしても虚しかった。
その穴を、涙で埋めるように、花子は泣いた。
花を見ても、美しい公園を見ても、それを分かちあう吉川がいないという寂しさにつながった。
そして、二人で並んで写った写真を見ては泣いた。
(幽霊になって、会いに来てくれないかしら)
そう願うだけで、花子は毎日を無為にすごした。
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