第Ⅰ部 1-1 サヴォイ劇場

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「ブラボー」 スポットライトを浴びて、飛紗(ひさ)は3度目のカーテンコールにこたえていた。 自慢の衣装と銀のかんざしが、舞台でもひときわ輝く。 ここは、ロンドンにあるサヴォイ劇場。 世界ではじめて電気照明を使ったこの名門劇場は、目の肥えた観客があつまる場所としても知られる。 金色の装飾。 真紅のカーテン。 輝くシャンデリア。 そして、着飾ったたくさんの観客。 客席を埋めつくした人々のまなざしが、自分に集まっているのを肌で感じ、飛紗は夢見心地だった。 日常に退屈した観客は、芝居に刺激を求める。 いさましいサムライ。 キモノ姿の芸者の踊り。 激しい殺陣。 血のほとばしるハラキリ。 日本語のセリフは通じなくても、新山座の芝居は、ロンドンっ子に大好評。 でも、ひとつだけ、大きな問題があった。
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