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楽屋に取材にきた新聞記者をあしらい終わると、飛紗は、背の高い通訳に声をかけた。
「吉川さん、ちょっと待って」
そして飛紗は、花束がたくさん積まれたテーブルから、マカロンの箱を取りあげた。
小柄な飛紗は、ロンドンでは、「動く日本人形」と呼ばれる人気者。毎日たくさんの花束や差し入れが届いていたのだ。
もっとも、新山座の最大の見せ場はサムライの斬りあいとハラキリで、飛紗の出番は少なかったのだが……
「一緒に食べましょう」
「…え?」
吉川は、驚いたように、飛紗の顔を見た。
吉川は、先月新山座に入ったばかりの通訳兼交渉係。アメリカの大学を出たという変り種だ。
役者と違って、ライバル意識抜きで話せるので、飛紗にとっては安心できる相手だった。
それに……掘りの深い知的な顔立ちが魅力的だった。
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