第Ⅰ部 1-1 サヴォイ劇場

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その吉川が戸惑っているのを見て、飛紗はくすりと笑った。 「差し入れは、みんなで平等に分けなきゃね。でも私たち、芝居が終わってからも働いたんだから、その分のお手当てをもらいましょうよ。」 「いや、僕は…」 吉川は、まだ戸惑っていた。 その真面目さぶりが、なんだか飛紗には可愛く見えた。 「今日は夕飯抜きでしょ。さ、食べて。その代わり、私の質問に答えてちょうだい」 飛紗は、マカロンを1つつまんで口に入れると、吉川に箱を差し出した。 「おいしい!」 マカロンの糖分が、空腹の胃に染み渡り、飛紗は思わず声を出した。 吉川も、そんな飛紗につられて、マカロンを口に入れた。 「吉川さん、私たち、どうしてこんなにお金がないの?」 「え?!」 飛紗のあまりに素直な質問に驚いたのか、吉川は、ムセかけた。
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