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お店の服に着替え、お客さんを待つ。
「…やあ彰くん、今日は弥生君はお休みかい?」
しばらくカウンターでグラスのチェックをしていると、常連のサラリーマンの男性が来た。
「いらっしゃいませ稲葉さん、弥生さんはちょっと…」
稲葉さんに事情を話す。
「なるほど、拾ってきた、ねぇ」
稲葉さんはちびちび酒を飲む。
「彰くんも弥生君の癖みたいのがうつってるね」
微笑みながら稲葉さんは言った。
「弥生さんの、ですか」
「ああ、苦しそうにしているなら猫でも犬でも猿でも、人間も拾ってくる弥生君の男らしさ、君だって彼女に拾われたんだ、弥生さんの生き方もうつるか~」
そう、俺は弥生さんに拾われた、ちょっとした事情で死にかけていた俺を拾ってアトモスフィアに連れてきて、いきなり食べ物を出された。
何も聞かずただ連れて行かれ、飯を出された。
でもその時にとって弥生さんの強引な優しさが身に染みた。
「だから、あの人を無視できなかった」
「うん、それは素晴らしいことだよ」
稲葉さんはまた笑いかけてくれた。
「もう一杯頼むね」
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