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此処にいるからと、玄関扉に背を預けた黒崎さんを中へと入れて、ソファーに座らせ珈琲を出した。
開けっ放しだった窓から容赦なく吹き込んだ雨の所為で、床もカーテンもびしょびしょで酷い。
それは後で拭くとして、着替えを持ってシャワーを浴びる事にした。
待たせている黒崎さんを気にしつつ、急いで洗って部屋に戻ると、そこにはさっきとは違う黒の上下のスウェットを着た黒崎さんが珈琲を飲んでいた。
ふと窓の方を見れば、濡れていた床は綺麗に拭かれている。
「あれ?」
小首を傾げる私に、フッと笑って私がシャワーしている間に自分も浴びてきたのだと教えてくれた。
「最初からこうすれば良かった。どうせ一緒には入れないんだから」
そう言ってニヤリと厭らしく笑った顔も綺麗で、熱くなる顔を見られないように俯いて『……ありがとう』と言った。
「ああ、かまわないよ。濡れてる範囲は狭かったから見た目より拭くのも大して大変じゃなかった」
「そうじゃなくて!」
「ん?」
優しく微笑んでソファーの端に身体を滑らせ、立ったまま話す私に隣に座るように促す。
おずおずと腰を下ろしながら話を続けた。
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