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「いや、あの。勿論、床拭いてもらったのもだけど」
「ん」
優しく相槌をうつ黒崎さんの綺麗な顔をじっと見る事が出来なくて、上目遣いにチラチラと視線を合わせながら話す私って本当に情けないと思う。
でも、目を見てお礼を言わなきゃと云う心意気だけは買ってほしい。
「今日は本当にありがとう」
「ん」
「やっぱ、私ちょっとおかしかったし、あのままだったら確実風邪ひいてたし。なんか……ホント、ありがとう」
「ん。どういたしまして」
最後はちゃんと目を見て言った私を、見つめ返して言ってくれた黒崎さんは、そっと手を伸ばして私の頬を撫でた。
「ッ──。でも!もう大丈夫だから、黒崎さんも帰って休んでください」
頬を撫でられ下腹部がキュンと疼いたのを気付かれたくなくて、俯いて早口にまくし立てた。
久しぶりの感覚に、少し息が上がっている。
このまま黒崎さんの傍にいたら、広い胸に縋ってしまいそうで怖かった。
凄く弱ってるんだと思う。
心が疲れてるんだと思う。
だから、優しくしてくれた黒崎さんをそんな弱い心が求めて、身体がそれに反応しているんだ。
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