~眠り姫~

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~調理実習~ 「ヤバッ! 真佐子のうまっ!」 私が作った焼きたてのスコーンをつまみ食いしたなっちゃんが叫んだ。 きちんと計って作るお菓子作りは私の性格にピッタリだった。 料理みたいに適量なんて書いてあると、適量の文字からきっと一歩も進めなくなる。 「あんたにも取り柄があったんだね」 なっちゃんは悪びれるわけでも言った。 美人でスタイルもいいけど口が悪く毒舌のなっちゃん。 でも、裏表がない性格ではっきりとしている。 冴えない私とは正反対。 そんななっちゃんが私はいつも羨ましかった。 「ウチのなんて…ひどっ!何コレ!めっちゃ焦げたし!」 なっちゃんは自分が作った見事に真っ黒なスコーンを変な物体でも見るように眉間にシワを寄せながら見ていた。 「真佐子。 交換!」 ひょいっと私のとなっちゃんのスコーンが入れ替わった。 「あっ…!」 と、言う間もなくだ…。 「やったぁ!真佐子のスコーンゲット!」 なっちゃんは嬉しそうに私が作ったスコーンを頬張っていた。 「委員長!あたしにもちょうだい!」 「えっ?」 「委員長!あたしにも!」 あっという間に私の作ったスコーンは無くなった。 手元に残ったなっちゃんが作った真っ黒なスコーンを見て、私は食べた方がいいのか悩んでいた。
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