―序章― くるくるくるり

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遥が爆笑すると、彼の耳元のピアスが揺れる。 シルバーの、細長い長方形。 これもまた、校則違反。 わざと?なんて聞きたくなるくらい、彼は全身校則違反まみれだ。 ……指導室入ったら身ぐるみ剥がされんじゃないかと思う。 「どーするよ、無理矢理個別指導つけられたら」 本人はそんなことを考えもしないのか、それとも諦めてるのか、気楽そうだ。 気楽そうに、ジャラジャラと首元のアクセサリーを揺らす。 「というかあたしは間違い無くつけられるって踏んでる」 「マジか」 「塾のが早いってったって、あたし塾行かないもん」 「行きゃいーじゃん」 「あんたはどうなの」 「俺はめんどいから行かねえ」 「ふうん」 「…………」 ……ほんと、気楽な男。 「……なあ」 あたしがそんなことを考えながら、気の無い返事をしていた所為だろうか。 不意に、遥の目が横からあたしを覗き込んだ。 「え?は?何っ?」 「どーなんだよ、お家問題は」 いきなりの至近距離にぎょっとするあたしを余所に、遥は真顔で聞いてくる。 こういう手慣れた感じの距離の詰め方に、彼が所謂“手練れ”であることをたまに感じる。 え? お家? 問いの意図を理解できないあたしに、遥は繰り返した。 「お家問題」 だけど繰り返されたところでピンと来ないあたしは、当惑した顔を遥に向けるしかなくて。
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