プロローグ

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部屋に響くのは、耳に心地好いクラシック。 あたしはこの曲が好きだ。 そっち方面に詳しくないあたしには、この曲が何の曲なのかすらさっぱりわからないけど。 作曲したのが誰なのかも、演奏してるのがどこのオーケストラなのかも、全く全然わからないけど。 知りたいとすら思わないけど。 こんなあたしの頭にこの曲が染み付いてるのは、佐保先輩がこの曲をよく流してるからで。 それはもう、耳にタコが云々って言葉が相応しいくらいに流しまくってるからで。 だから、佐保先輩もこの曲が好きなんじゃないかと思う。 「…………」 「…………」 この、壮大な。 大胆で、だけどたくさんの音が絡み合う精巧な作りの…。 「…………」 「…………」 綺麗な、旋律。 名曲なんだと思う。 だってクラシックなんか何もわからないあたしですら、こうやって惹かれるんだから。 クラシックなんて聴いたら大抵途中で寝ちゃうあたしですら、こうやって音楽の世界に浸れるんだから。 たぶん、絶対、名曲中の名曲に違いない。 というかそうあるべきだと思う。
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