―序章― くるくるくるり

24/25
241人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
遥は何事も無かったかのように笑顔に戻り、最後の階段を軽やかな足どりで上り終えて上であたしを待つ。 いつも、いつも。 彼は“何事も無かった”かのような笑顔に、すぐに戻る。 「早くしろよ静奈!あんま遅くなっとどやされんぞ!」 …………。 “二年間思ってても一度も会えない片思いと” 「歩く速さは女子に合わせるべきでしょ普通っ!」 “中学生の頃から一緒にいて告白も出来ない片思いと” 「あーハイハイ。待ってっから待ってっから」 “どっちが不毛なのかしらね” たたん、とリズムを踏むように階段を駆け上がり、遥の隣に並ぶ。 ――あたしはその答えを知っている。 「ああ、そーいや」 「何?」 「うまくいってんの?塚原とは」 …………。 好きな人にこんなことを聞かれているあたしは。 あたしの、この恋は。 「ね…え」 「ん?」 「………なんでもない」 ……凄まじく、不毛だ。
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!