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遥は何事も無かったかのように笑顔に戻り、最後の階段を軽やかな足どりで上り終えて上であたしを待つ。
いつも、いつも。
彼は“何事も無かった”かのような笑顔に、すぐに戻る。
「早くしろよ静奈!あんま遅くなっとどやされんぞ!」
…………。
“二年間思ってても一度も会えない片思いと”
「歩く速さは女子に合わせるべきでしょ普通っ!」
“中学生の頃から一緒にいて告白も出来ない片思いと”
「あーハイハイ。待ってっから待ってっから」
“どっちが不毛なのかしらね”
たたん、とリズムを踏むように階段を駆け上がり、遥の隣に並ぶ。
――あたしはその答えを知っている。
「ああ、そーいや」
「何?」
「うまくいってんの?塚原とは」
…………。
好きな人にこんなことを聞かれているあたしは。
あたしの、この恋は。
「ね…え」
「ん?」
「………なんでもない」
……凄まじく、不毛だ。
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