―序章― 人間暴風雪

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最悪だ。 相も変わらず薄い笑みを目にして、まず頭に浮かんだのは、その言葉だった。 ――最悪だ。 一体あたしは今までこの人を相手に、どれだけこの言葉を頭に浮かべているのだろう。 低い声を耳にした瞬間背筋に感じたのは、『寒気』なんて生やさしいものじゃない。 もっともっと激しくて、もっともっときつい…… 「英語の学年順位、お前下から三番目なんだって?」 ……例えるなら、肌に刺さるような暴風雪。 大、大、大吹雪。 彼が登場した瞬間の空気の変わり具合に一番近いのは、たぶんそれ。 「……どうして、此処に?」 「バイト代、弾むって聞いたからな」 嗚呼、神様。 あたしはそんなに悪い子じゃなかったでしょう? それどころか、結構いい子だったでしょう? 校則破って茶髪にしてるあの人達とは、一味違ったでしょう? それなのに…… どうしてくれようこの仕打ち。 「…………」 「有り難く思え、存分に扱いてやる」 …………。 場にそぐわない程の威圧感をその瞳から飛ばし。 まさしく彼は、“ご光臨”なされた。
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