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「個別指導をつけようと思うんだ」
進路指導室のドアを開けると、その先にいた生活指導の山岡先生に、開口一番そう告げられた。
それは予想の範囲内で、「げっ」という遥の心底嫌そうな声を聞き流し、あたしは頷いた。
「原田」
そこで呼ばれたのは、あたしの名前だ。
「お前は英語だ」
「はい」
「英語さえなんとかすれば、どうにでもなる」
「はい」
「英語が酷過ぎる」
「はい」
「努力の痕跡が全く見れない」
「すみません」
「はっきり言って今のままじゃどこにもいけない」
「……はい」
ここにいるのはあたしだけじゃないんだから、もうちょっとオブラートに包んでくれないかなあ。
密かにそう思いはしたけれど、あたしの返事は従順で。
隣の遥がわざとらしく鼻で笑ったからどついてやりたかったけれど、あたしは微動だにしなかった。
だってここまでの展開も全部、あたしの予想通りだったから。
……ただ。
「週に何回ですか?」
「週五」
…………。
あたしの予想は、そんなにたくさん連続では当たってくれなくて。
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