一章 始まり

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はぁ、いいんちょも真面目だよな…。   なんて、机に肘をつき、顎を乗せて窓から外を見ようかと思った時、俺の目には景色ではなく男の顔がどアップに映る。     『うおっ!!』     『はっはっは、朝一からいいんちょから説教か、まったくワルだねぇ~拓海くぅん』     『あ~なんだよ澪二か、脅かすなよ、てゆうか顔が近い!』     『まったく、2年になってからまだそれほど経ってないのによく目立つ男だよ拓海は、って1年からずっとか』       もう一人、顔面どアップに現れたこいつは鷺ノ宮澪二。   俺の前の席にい『俺の名前は鷺ノ宮澪二だ!好きなモノは女の子!女の子なら二次元でも三次元でも大好きだ!!拓海の事も大好きで、拓海といちゃいちゃできる前の席なのが今の俺の自慢さ!キラッ☆』     『どこ見て喋ってるんだお前。…てゆうか冗談でもやめろよキモいから』     『いやぁ昨日寝てないせいか今日はやたらテンション高くてさぁ、ん?結構マジだぜ?』   『キモいわ!』     …ったく。   俺の言葉を遮り急に出てきたこいつは、顔もいいしスポーツもかなりできる。 勉強も人並にはできるいわゆる完璧人間に近いのだが、それをごまかすかのように普段ちゃらけているのでモテなかったりする。   中学からの腐れ縁なのだが、俺の「過去の事故」を話したことのある唯一の人間だったりする。 というのも、それは俺が話してもいいと思えるほどこいつを認めているからであって、親友と言える存在だ。   まぁ、そんなことは調子にのるだろうから本人には口が裂けても言わないが、こいつもこいつでわかってくれていると思う。     『また喧嘩か?』     『あぁ、普通に歩いてたら向こうから歩いてきてさ、避けて歩いてるのにわざわざ近付いて肩ぶつけて来て、おいっなんて言われるんだぜ?』     『ははっ、酷い話だねぃ』     『で、謝って素通りしようとしたら金くれよ~なんて言いながら殴りかかってくるもんだからさぁ』     『あーあ可哀相なやつら、そいつらは拓海のこと何も知らなかったんだな』       軽く雑談を交わしていると、そこで教室の扉が開く。     「おぉ~スマン、ちょっと忘れ物をしてな、遅れたがホームルーム始めるぞー」     『っと、角倉のやつ来たな。じゃっ、あんま弱いものイジメするなよ?』   そう言い、澪二が前を向くと、普段通りにホームルームが始まる。
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