第一章 呪われた秩序

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世界は、滅びた。 21世紀、欧米の金融危機が深刻化し、回復を見せない年月が幾年も続いた。世界経済は破綻し、国という機関の権力が衰弱していた。 時を同じくして、多くの国家がサイバーテロを受けた。国家機密や裏取引が次々と暴露されていき、民衆は離れ、多くの暴動やデモが多発し、遂に国はその機能をなさなくなった。 国家の力が意味をなさなくなってから、テロ集団による世界支配が始まった。テロ集団は各国のハッカーがソーシャルメディアを介して一つの闇組織を作り上げていた事により、かつての国をまたがって支配された。 もはや貨幣はただの紙切れと金属片と化し、街には暴徒が蔓延り、かつての権力者は安全そうな――ただし科学の何もない無人島のような場所で暮らして行く事を余儀なくされた。一般市民は暴徒に怯えながら、しかし統治がないだけの弱肉強食の世界で生きる事を徐々に覚えていった。 街には明かりが灯り、破落戸が多いくらいで、国家が崩壊したとは思えない平和さを取り戻していた。 国家を破綻に追いやったテロ集団には、実は国家機関のサイバー関係者が多く、闇取引や政治家の裏の世界を垣間見てしまったが為に裏情報を流したのだと噂されている。 今では誰が世界中のネットワークシステムや機密事項を管理しているか誰も知るものはいない。民衆が欲しがっていた自由は得られたのだ。弱肉強食という、科学が発達し人類が地球を支配することで崩していた秩序を取り戻すことで。
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