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「全知全能の書……か」
営業スマイルどころか、今度はぎこちない敬語までなくなった。なんなんだこの人は。
だが、この反応は……。
「その本は確かにうちにある」
やはり、噂は本当だったんだ。全知全能の書が実在することも、それがこの古本屋にあることも。
「あるのなら、是非見せていただきたいのですが。そして売っていただけるなら、買いたいんです……」
少し言葉を詰まらせる。売ってもらえるとしたら、はたして値段はどれくらい張るのだろう。今までバイトで貯めてきた金はほとんどおろして持ってきたが、全知全能の書なんてシロモノかと思うと、俺なんかが買える値段なのかわからなくなってきた。
「見せてやる事はできるがその前に、全知全能の書を読むと死ぬってことは知ってるよな?」
ハルはその目をいっそう鋭くしてこちらを見る。もともとその名前に興味を持って調べてきたのだから忘れていたわけではない。
だが、その本を持っている者に改めて言われると、急に恐ろしくなってきた。読むと死ぬ本……。
それも知っている、そう言いながらコクリと頷いた。
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