読むと死ぬ本

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「なら話が早いが、本当に読む気が……いや、とりあえずその本を持ってこよう」  少し言葉を詰まらせたハルは、店の奥に向かっていった。  ああ、いよいよだ。薬屋も古本屋も、おかしな二人だったが、今までもだがさほど苦労もなく、ついに万物の知識が詰まった本を拝見することが……。  そしてハルは再び姿を見せた。その腕に一冊の本を抱えて。 「これがお前が探している全知全能の書だ」  あらゆる知識が詰まった書物。彼女から手渡されたそれは、見た目よりもずっと重かった。これが世界中の知識の重みなのか。  図鑑のように大きく、百科辞典のように分厚い。古びた表紙は獣の皮が張られていて、ずしりと手になじむ。  そして何より驚いたのは、その装丁だ。金箔で彫られた表紙のタイトルは、俺の知る文字にはなかったが、俺が本を手にとった瞬間、不思議な記号の羅列は日本語の文字、漢字とかな文字に変化した。 「全知全能の書……」  表紙にあらわれた、金に輝く文字を読みあげる。続いていよいよ表紙を開き、中の文章を読もうとした瞬間―― 「待ちな」  ハルが俺の手を掴んで動きを止める。
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