27人が本棚に入れています
本棚に追加
「なら話が早いが、本当に読む気が……いや、とりあえずその本を持ってこよう」
少し言葉を詰まらせたハルは、店の奥に向かっていった。
ああ、いよいよだ。薬屋も古本屋も、おかしな二人だったが、今までもだがさほど苦労もなく、ついに万物の知識が詰まった本を拝見することが……。
そしてハルは再び姿を見せた。その腕に一冊の本を抱えて。
「これがお前が探している全知全能の書だ」
あらゆる知識が詰まった書物。彼女から手渡されたそれは、見た目よりもずっと重かった。これが世界中の知識の重みなのか。
図鑑のように大きく、百科辞典のように分厚い。古びた表紙は獣の皮が張られていて、ずしりと手になじむ。
そして何より驚いたのは、その装丁だ。金箔で彫られた表紙のタイトルは、俺の知る文字にはなかったが、俺が本を手にとった瞬間、不思議な記号の羅列は日本語の文字、漢字とかな文字に変化した。
「全知全能の書……」
表紙にあらわれた、金に輝く文字を読みあげる。続いていよいよ表紙を開き、中の文章を読もうとした瞬間――
「待ちな」
ハルが俺の手を掴んで動きを止める。
最初のコメントを投稿しよう!