読むと死ぬ本

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 邪魔をするなと眉間にシワを寄せて睨むが、俺とは比べものにならない程の険相で睨み返された。勝てる気がしないので、おとなしく開きかけた表紙を元に戻した。 「もう一度確認するが、今までにこれを読んで生きている者はいねぇ。本当に読むのか?」 「ハルちゃんが言ってることは嘘じゃないよ、今までにこれを読んで死んだ人を何人も知ってる」  ハルの忠告に続きテオも口を開いた。読むだけで死ぬ、嘘くさい話だが、いざ実物を持ってみると、本当にそれだけの力のある書物。そんな感じがする。 「それでも、読みます。この本に、俺がどんなふうに殺されるのかも興味があるし」  ハルもテオもしばらく俺の目をじっと眺めて、小さく溜息をもらした。 「ならあたしは止めない。お金はいらない、持って行きな」  ハルの言葉に、驚きよりも喜びが勝り全身を駆け巡った。なんとこんなにも簡単に、この世の全ての知識が手に入った……。 「だが勘違いするな、その本の所有者を決めるのはあたしじゃない。その本自身だ」 「その本の読者には誰だってなれるけど、選ばれた者しか所有者になれない……」  意味深に言う彼らに適当に言葉を返して店を出た。不思議な存在感と引力を放つ本を抱えてホテルの部屋へ戻る。  禁断の書物に吸い込まれるように、その重たい表紙を開いた。
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