読むと死ぬ本

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 翌日の朝。  あまり早くに到着しても、予約したホテルのチェックインまで時間が余ってしまうことはわかっていたが、じっとしていても全身が疼いてしかたがないので、予定よりだいぶ早く電車に乗り込んだ。  だいぶ早くといっても、通勤ラッシュの時間帯は過ぎているので、広いシートに腰掛け、窓の外をゆったり流れる景色を眺めていた。  だが遠くに映る見知らぬ光景を見ても、車輪が線路の上を転がる心地好い揺れを感じる間も、頭の中から目的の書物が離れることはなかった。  何度目かの電車を乗り継いで、ようやく目的の駅に足をつけることができた。雨避けさえ設置されていない、まさに片田舎の駅という感じのホームだ。  予約していたビジネスホテルはすぐに見つかったが、近くに商店街があったため、適当に散策していたらすぐにチェックインの時間になった。  狭いホテルの部屋に荷物を置いて、フロントで目的の本が眠る古本屋の住所を尋ね地図をもらった。  さあ、いよいよだ。この世の全ての知識が、俺のものになるんだ。  口元がにやけるのを精一杯こらえながら、古本屋に続く道を早足で歩きはじめた。
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