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彼に続き、地下への階段を降りていく。そう深くはない地下に、古本屋の扉はあった。
「うちは確かに古書も取り扱ってますけど、発行部数が少なくて値の張る本や古文書など、いわゆる骨董品を扱っているんですよ」
薬屋の店主は地下の店のドアノブに手をかけながら喋りだした。
「だから……相当熱心な収集家でないと、この店は知られていないんですよね。お客さんも本を収集されてるのですか?」
店主の言う通り、見える範囲で古本を取り扱うことを知らせるような看板や貼紙は見当たらなかった。一般的な小説や漫画を扱う書店とは違うのだろう。
「いえ、本を集めているわけではないのですが……ここに珍しい本があると聞きまして」
それを聞いたか聞いていないか、店主は黙ったまま扉を開く。薄暗い店内、想像してた古本屋独特の匂いはこの店から漂っていた。
「テオ、なんか用か?」
店の奥から声が聞こえた。乱暴な口調だが、若い女性の声だった。
「お客さんだよ。本屋の方に用事があるそうだ」
テオと呼ばれた店主が声が聞こえた方向に返事し、僕に目を向ける。すると、先程の声の主であろう、グレーのニット帽を被った女性が薄暗がりから姿をあらわした。
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