1人が本棚に入れています
本棚に追加
森を抜けて
ギルバートは村を出て、まっすぐ進んで森にさしかかった。この森の奥は魔物の巣窟でもある。ギルバートはさっきまでその森で狩りをしていたが、奥まで立ち入ったことはない。森の奥は魔物の巣窟であると、彼は知っていたが、城下町に行くには森をよけてかなりの遠回りをするか、この森を通り抜けるかどちらかしかない。ギルバートは遠回りをしている時間はないとみて、後者を選択した。
ギルバートは立ち入ったことのない森の奥地への入り口へ来た。
ゴクリと喉を鳴らして、ギルバートは未知の領域へと足を踏み入れた。
そこは静かだった。いつも狩りをしていたところとは、明らかに空気が違った。木々が揺れる音はするが、動物の声は聞こえてこない。しかし、森の奥へ入ってから何か気配を感じる。何かがこちらを見ている。しかも、それは殺気を帯びていて、今にも襲いかかってきそうだ。そんな感覚がしたギルバートは辺りに注意を払いながら、慎重に進んで行った。
しばらく歩いて、開けた所に出た。
そこに来てさっきから感じていた。気配がよりはっきり感じられた。そして、それは突然ギルバートに襲いかかった。
「!?」
間一髪で攻撃を避けたギルバートは、それを見た。
それは大きな体をしていた。太く堅そうな四肢をしていて、顔はたてがみで覆われていた。その目は怒り狂っているように見えた。
(こいつは…森の主だ。)
ギルバートは父や祖父から、先祖代々からの言い伝えとして、森の主について聞かされていた。その話の中の森の主と、今、目の前にいる森の主が、ぴったり一致する。
左手腰の刀に手を伸ばそうとしてやめた。その言い伝えで、森の主の子孫が残らなければ、やがて森は死ぬと聞かされていたことを思い出したからだ。
(逃げるか、追い払うか、気絶させるか…それくらいか?方法は…。)
そう考えている間に森の主の拳がギルバートめがけて振り下ろされる。なんとか避けた。
(隙を見て逃げ出そう。)
森の主はまた殴りかかってきたが、ギルバートがうまく避けたため、バランスを崩し、倒れた。
(今だっ。)
ギルバートは地面を蹴って走り出した。
しばらく走ってなんとか出口付近に到達した。
「はあ、はあ、はあ…振り切ったか…危な
最初のコメントを投稿しよう!