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――“彼”は親の顔を知らない。
赤ん坊の頃に施設に拾われ、本当に自分が生まれた日さえ知らなかった。
性格はおっとりとして優しく、かと思えば責任感が強く芯もしっかりとして。
施設の子供達の中で彼が年長者となってくると、自然に彼は年少組の善き兄役となっていた。
春の日だまりのような温かさを纏う彼の傍には、何時も幼く無邪気で、幸せそうな声が満ちていた。
――あの日が来るまでは。
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