Act.1 始まりの声

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「あー、実は今回神からのお告げでな、異世界人の召喚を行っていたのじゃ」 「!?異世界からの召喚って……そんな事が可能なのですか?」 「うむ。まあ世界の法則をねじ曲げて行うモノじゃからまず行われない、禁忌ギリギリの行為じゃがの」 唐突で突拍子も無い少女の言葉に私は思わずオウム返しで聞き返してしまう。 そんな問いに注釈を付けながらも少女は何でもない事の様に肯定。 ただその表情は暗のあるもので、そして何故か隣の女性の表情も強張り険しいものとなっていた。 感心する私と黙り込む先生を前に大天使様の言葉は続く。 「そこで先程までこの祭壇に召喚するべく術式を紡いでいたのじゃが、途中で術式に乱れが生じてな」 「どうやら『アレフ』の森林地帯に召喚されてしまった様なのじゃ」 「術式に乱れって……。全く何してるんですか、メタトロン様」 「たはは……すまんすまん」 漏れた苦言に恥ずかし気に頭を掻く少女。 しかし状況としては苦笑いで誤魔化している場合ではない。 神様が何故彼女に異世界の人を召喚させたのかは分からないけれど、何か意味がある事だけは確かだろう。 それをチョンボで別の場所へと飛ばしてしまったのは流石に擁護出来ない話だ。 (しかも召喚した『アレフ』の森林地帯は広い上に凶暴な獣が多い……早く見つけないといけないのに時間がかかる) (これは時間との勝負になるな……) 話を聞いて改めて情報を纏めていくと共に表情が自然と険しくなっていった。 恐らく先生が黙り込んでしまったのも今自分が思い至った事を最初の言葉から推測したのだろう。 ならば手を拱いている場合ではなく直ぐにでも行動を起こさなければならない。 「先生、捜索隊はどうしますか」 「ん、ああ……そうだな。しかし参ったな。今学園にどんだけ生徒残ってる?」 「あ……」 女性の言葉に私はハッとして今まで頭の中から抜け落ちていた問題を思い出す。 捜索隊を結成する為の最大の課題。 それは今この学園が春期の休暇期間に入っていて、捜索に出れる人員がごく僅かしかいない事である。 当然休暇ともなればわざわざ学園にいる理由はなく、全寮制と言ってもその大半は帰省か修行を行うのが通例。 私の様にこうして残っている生徒は数えられる程しか覚えがない。 そして前述の修行は学園の教師が企画し引率を行うものであり、学園の教師も半数近くが不在だった。
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