Act.1 始まりの声

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○   ○   ○   ○ ――音が聞こえる。 己という存在全てを包み込む様な、優しく温かな音。 初めの内は1つの音に聞こえていた振動。 しかしそれは体内へと響く度に区分けされ、だんだんとその姿を表してきた。 木々のざわめき、水のせせらぎ、風の音、小鳥のさえずり、獣の声。 それらは自然を形作る者達が発し、重なり合った幾つもの生命の音が奏でる交響曲。 その心地良い、囁きの様な音の群に途絶えていた意識が揺さぶられ、瞼越しに差し込む夕日が俺の意識を揺り起こした。 「っ…………ここは……」 開いた視界に飛び込んできたのは風に揺れる緑と、木々の隙間から飛び込んでくる煌々とした朱色の光。 陽光に目を焼かれ、眩しさに目を細めた俺はのっそりとした動きで体を起こした。 支えとしてついた手に返るのは柔らかな草と少し湿った土の感触。 そのしっとりとした冷たさをまだぼんやりとした意識で認識し、やがて無意識が漏らした疑問を改めて意識する。 「ここ……何処だ……?」 緑生い茂る周囲を見渡し、続いて夕暮れに落ち行く茜空を見上げる。 理由は何時だか読んだサバイバルの本で、自分の置かれた状況が理解出来ない時にはとにかく周りを見てどんな情報でもいいから頭に詰めろと書いてあった……気がしたからだ。 少し記憶が曖昧だが、多分今がそれを実践するべき時なんだろうと思う。 そうしてしばらく周辺を観察する事で手に入った情報は3つ。 視界から入る情報は辺りは木々が埋め尽くし、それが見渡す限り続いてる事。 空を見上げて手に入った情報は太陽の位置からしてもうそろそろ夜が来る事で、 地面を踏みしめる足が教えてくれるのは今立つ場所が多少の凹凸はあれど基本は平面と言う事だった。 それらを3つを頭の中で総合した結果出来上がるのはそれとは別の新しい情報である。 「森……だよな。それも結構広い感じ。一体なんでこんなとこに居るんだ俺?」 集まった情報から地形の見当をつけ一息。 そして口から零れ落ちた言葉に思い出すのは気を失う寸前に起きたあの現象である。 自分を取り巻く世界が突然活動を止め、停止した空間の中で響いた声。 それと同時に現れた檻の様な光の帯に閉じ込められた俺はそれが放つ輝きに呑まれ、
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