Act.1 始まりの声

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○   ○   ○   ○ 「はぁ……はぁ……出口、何処だよマジで……」 そしてそれから三時間が経った頃。 俺はと言うと延々続く森林から未だに脱出出来ないでいた。 もう日は完全に落ち、暁色に代わり枝葉からは弱い青白の光が覗く。 燃える夕焼けより目には優しいが、月明かりでは如何せん優しすぎる。てか暗い。 そんな柔らか過ぎる光では足下を照らすには不確か過ぎて、今はスマートフォンのライトを頼りに進んでいた。 しかしそんな強行軍もそろそろ限界で。 電池残量が一桁台になった事を知らせる振動に嘆息し、俺は近くの木に倒れ込みながら寄りかかる。 「ヤバい…………そろそろ本格的にヤバい……。マジでヤバい……」 一向に改善されない状況&肉体精神双方の疲れから漏れるやべぇの連呼。 暗くなっても全く見えてこない出口。 残り半分を切ったペットボトル飲料。 唯一の光源であるスマホの電池残量。 どれをとっても悪い事ばかりで『希望』の希の字も見えやしない。 ついでに言えば脚を動かしてた謎の衝動も何時しか鳴りを潜め、空元気を出すだけの精神力も売り切れた。 「……今日はもうここで野宿だな」 これだけ歩いてもまだ出れないと言う事はこのまま同じ時間歩き続けたとしても森を出れるかは正直怪しい。 それにライトもそう使えない今、このまま歩くのは得策とは思えなかった。 また日が昇るまでしっかり休んでそれから再開するのがベストな選択肢だろう。 そうしてこれからの方針を決めた時、腹の虫が盛大に鳴いた。 「んじゃ、そうと決まれば飯にするか」 よくよく考えれば昼前に新しい学校へ着く予定だったのに突然こんな事になったんだ。 昼飯なんぞ食べてる訳がない。 そんな事すら考えから飛んでいた自分の余裕の無さに自嘲しながら、こんな時でも訪れる空腹に呆れすら覚える。 まあと言って食べない訳じゃないが。 「しかし……なんでこんな時に限ってスナック菓子しか持ってないんだろうな俺。あー……ノド乾く」 醤油味の濃い某ラーメン菓子を半ば流し込む様に咀嚼し、水を飲んで一息。 次に勢い任せて醤に続いて名前に矛盾が生じてる焼そば味の同じ菓子を貪る。 これがキャンプなら少しは味わって食べるだろうがこんな時じゃ味は関係ない。 エネルギー摂取をする為の食事。 言ってしまえば殆ど餌みたいなものだ。 結局その2つが空になったところで俺は今日の食事を終わりにした。
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