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並び立つ仲間達の言葉が繋がり、会話を成したその内容に俺は緑髪の少女が浮かべたのと同種の笑みを浮かべ嘆息。
普通『世界の終焉』に立ち向かおうとする者達ならもっと緊張感があってもいい筈だが、彼女達との会話にあるのは適度な緊張感と程良い脱力感だ。
(相変わらず締まらない面子だな。まあ、ガチガチに緊張してるよかマシだけど)
「……?どうしたアマネ、何か言いたそうな顔をしてるが」
「いや、なんでもない」
「む……そうか」
横に立つ少女からの疑問詞を適当にごまかし、空を仰ぐ。
妙に勘の鋭い彼女にこれ以上変な気遣いをさせない為に、俺は顔に貼り付いた苦笑を剥がしてそれを不敵な笑みへ。
と――それに合わせて脳内に流れ込んでくる第三者の意思。
言葉の前に小さく入る息遣いは覚えのあるもので、続いて脳に響いたのはやはり聞き覚えのある幼さの抜けない声だ。
『よし……どうやら全部隊配置に着いたようじゃな』
「メタトロン、そっちはどうなってる?開戦までにイヘイエルは動きそうか?」
老人の様な言葉遣いと明らかにミスマッチな舌足らずな声。
その声の主の名を呼び街に眠る最高戦力の状況を聞くと、彼女の口から返ってきたのは苦々しさを含んだ溜め息である。
『無理じゃな。先日の戦闘で受けた破損は直ったが魔術回路の復旧が間に合わん。あと二時間はかかると思ってくれ』
「了解。なるべく早くしないと俺達だけで片しちまうぞ?」
『ふん。魔力の魔の字も知らなかったガキが大層な口を叩く様になったものじゃの』
深刻そうな少女の声に軽口を叩くと、それに楽しげで少しの皮肉を含んだ声が返る。
程良く張った心にとって彼女のやりとりは心地良く、このままもう少しだけ会話を続けようと俺は口を開き、
「っ――この気配……!」
『ああ、来たか』
背を撫でた漠然とした悪寒に出かけた言葉を飲み込んだ。
空を駆け抜けた気配の風は俺達を正面から襲い、それにワンテンポ遅れて背後左右から同様の気が波となって肌に伝わる。
全方位から押し寄せた邪悪な気配に前を見れば、雲を飲み込みながら宙に浮かび上がる血色の陣。
複雑怪奇な紋様を描くそれは途方もなく巨大で、数キロ以上距離がある筈の現在地からでも全長10メートル以上はある様に見える。
街を取り囲む様に東西南北に現れたそれは空間を歪め、やがて空を毒々しい色彩に染める大量の黒点を吐き出した。
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