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アイン・ブレード
「起動しろ、『0の大剣』」
注がれていく力に反応して胎動の震えを帯びる魔導兵装。
一定リズムで刻まれる眠りの鼓動に俺は呼吸を合わせ――続く一息で短剣の内部へと莫大な魔力を叩き込んだ。
その一撃に、剣が目覚める。
展開される仮初めの刃は鍔となり、装甲のスライドと共に伸張して姿を現す魔力発振器。
発振器の先端から紡がれる緑光は空間に文字を含んだ複雑な紋様を描き、その周囲を一本の光帯が結ぶ事で短剣は全長2m弱にも及ぶ光の大剣を成す。
これら一連の動作が行われている数秒の間に5人の仲間達も各々の専用魔導兵装へ魔力を注入し、その起動を終えていた。
戦への準備――そして覚悟を終えた俺達の間に交わされる視線は笑みと決意を含んだもの。
「行けるか?」
「当然だ」
「準備万端だよっ」
「……大丈夫、問題無い」
「何時でも行けるぜ」
「はい、私も大丈夫です」
意思確認の声に返る五人全員の声は全て即答の早さを持つ。
まるでそんな問いは無用だと言わんばかりの態度に俺は苦笑して闇一色の空を振り仰ぐ。
その先に広がる光景は彼我の絶望的なまでの戦力差を頭ごなしに思い知らせてくるもの。
しかしそれに後込みする様な者はもうここには居なかった。
「第三特選空戦部隊、出撃準備完了しました!」
『出撃を許可!存分に暴れて来るが良い、力の担い手よ!』
「了解!行くぞみんなっ!」
「「「「「了解っ!」」」」」
下りた許可に声を張り上げ駆け出せば、続くは言葉と足音。
それらに仲間がいる事の実感を得た俺は、城壁の端を蹴りつけて宙へと身を投げた。
重力が体を捉え、全身が自然落下の風に抱きしめられる。
(全く……人生ってのはホント何が起きるかわからないな)
半年前俺の居た世界でこんな事をしたらただの飛び降り自殺にしかならず、その先に待つ結末は大怪我か死亡の二択だろう。
だが――この世界では違う。
意識を背と足裏に集中させて内に秘めた魔力を解放すれば空を穿つ翼が現れ、生み出される浮力。
重力を上回るその力を纏い、それを駆使する事で黒の群に向けて闇の大気を駆け抜ける。
(あっちじゃ目立たない学生だった俺が今じゃこのファンタジー世界を救う鍵か……。冗談でも笑えないっての)
近付く黒の集団との距離。
魔族の姿が識別出来る距離にまで近付いた事を認識した俺は大剣の柄を握り締め、初動の為に光刃を下段に構えた。
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