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「斬り込むぞ!フレア、アリス、援護頼む!」
「はいっ!」
「……了解」
指示に返る返答は了承の声と共に放たれる二色の光弾の嵐。
闇に軌跡を刻む連射に魔族は群を崩しての散開を強要される。
崩れた陣形――その中の一体に狙いを付けた俺は背中の羽と足裏に魔力を集中させ、開放。
「っ――おぉっ!」
「!?」
解き放たれた魔力が生む加速は魔族との距離を一瞬と言う時間を以て0にし、その身が擦れ違う瞬間に宙に刻まれる光閃。
走る一刀は異形の右翼と右腕を断ち切り、浮力を失った魔族は陸戦部隊が展開する地上へと落下していった。
(ここに来てもう1年か……。随分と経ったもんだ)
上空から降り注ぐ術式による攻撃を避けながら、牽制代わりに指先で紡いだ魔力弾を放つ。
迫る攻撃を身を逸らす事で回避した魔族は此方に襲い掛かるべく翼膜を大きく展開。
しかし黒翼が宙を穿つよりも先に大気を切り裂いて飛来する不可視の斬撃が異形を切断した。
その力を放った銀髪の少女は油断無く槍を構え、穂先に渦を巻く風を纏わせる。
(あの時……あの声に反応してなかったら、今頃俺は何してたんだろうな)
闇に煌々と輝く灼熱。
女性の振りかざす戦斧は装甲の展開に伴って露出したスリットから火炎を放出。
空間へ叩き付けられる一撃に炎は勢いを増して燃え盛り、込められた魔力の爆発に蛇竜となって魔族を呑み込んでいく。
(いや、もしもの話は止めだ。とにかく今は――)
炎蛇の牙からなんとか逃れ、反撃の体勢をとる数体の影。
だが熱せられた大気に放たれる極寒の刃がそれを許さない。
射出される十を超えた氷柱は魔物の四肢を貫き、凍結の中に閉じ込められる異質の肉体。
寄越された青髪の少女からの視線に頷き、俺は落ち行く三体の異形を一閃にて叩き割った。
「この世界を守る為に戦う。生き残るぜリーネ!」
「ああ、わかっている!」
回避機動の中で擦れ違った少女と笑みを交わし、俺達は空に魔力の軌跡を残しながら数の減らない黒の群を睨み付ける。
未だイヘイエルは起動せず、敵の主力も現れていない今、圧倒的な戦力差に変化は無い。
けれどこの仲間達と居る限り負ける気はしなかった。
(必ず勝つ……あの日の約束を果たしてみせる!)
決意を新たにした俺は再び戦の渦中へ己の身を投じてゆく。
全ては、守るべき者の為。
そして二つの世界を賭ける戦いは時間と共に激しさを増していった。
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