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叔父の家に行くことになった。別段深い意味もなく、単なる帰省というだけで車の振動と臭いにさらされ、私はやはりと言うべきか不機嫌であった。
都会っ娘な私としては叔父の住む田舎には申し訳ないが興味も面白みもなく、つまりは家でだらだらしたいと言うわけだ。
ただ、そのだらだらしたいというのを返上して(まあある程度強制的ではあったが)、叔父のところへ行く気になったのはお小遣が貰えるのでは等という俗っぽい理由からである。
真に申し訳ねぇな叔父よ。だが目下、花の女子高生である私にとって、“推定五千円”と“この移動中の苦痛の消失、並びに家でだらだらすること”を天秤に架けた結果としては推定五千円に傾いたのであった。
「もうすぐ着くぞ」
父がぶっきらぼうにそう言った。車のシーツ越しに父を見遣る。
運転に集中しているのか前をずっと向いて瞬きの回数も減っている。
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