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永遠に、貴方を思ふ。
――嗚呼、あなた。来てくださったのですか。こんなに痩せて弱りきった私を見ても、なんの得にもなりませんでしょうに。
ふふ。冗談ですよ。あなたがお優しいことは私がよく存じ上げておりますから。ご安心なさいませ。
――え? 最期の我儘?
まあ。あなたが、たかが女房である私ごときの我儘を聞いてくださるとおっしゃるのですか。ふふ。有難うこざいます。そうですね、それではお願いしましょうか。
私が昔おつとめしていた姫様の邸。あそこの様子を見てきていただきたいのです。私のこの身体では到底耐えられる道程ではございませぬ。お願いできますか?
――理由、ですか? そうですね。では語りましょう。
私が愛した、たったひとりの姫様のお話を。
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