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「姫様。そんなところにいてはお身体が冷えてしまいますよ」
――わたくしは、侍従の言葉に耳を塞いだ。
「雪が綺麗だこと」
「そんなに端近にお寄りになりますと、誰とも知れぬかたにお姿が見られてしまうやも……」
「こんな山の奥に、誰がいらっしゃるというのか。侍従、御覧なさいな。地面が真っ白だわ。外に出て踏んでみたいの、いいかしら?」
「姫様っ! 答える前に外に出ないでくださいませ!」
わたくしは、宮の一粒種という立場だというのに、奔放で勝手で教養もなく、女房たちにとっては心配の種。
けれどわたくしは、父上がこの山奥に屋敷を建ててくださったことに何より感謝している。
だってわたくしは、世間の姫様たちのように淑やかに過ごすのは嫌いなんですもの。
いつでも暴れ回れる男が、町娘が、どんなに羨ましいことか。
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