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「あ~だりい…」
そう呟きながら男は自分の机の上でうなだれた。
この男が物語の主人公“鈴木 翔”だ。
冒頭から全身に気だるさを身に纏った男の周りには、昼休みなのに誰も近寄らない。
これがいつもの光景なわけで、本人としては今更気にとめる様子はない。
周りの生徒達がくだらない雑談をし、男子生徒がデカい声で叫んでいる。
そんな雑音を耳で感じながら翔は目を閉じ始めた。
昼食後の腹が満たされた今、授業中よりも早いペースで襲ってくる睡魔に当の本人は身を委ねはじめた。
「翔!」
突然の呼び声に、俺はゆっくりと重い頭を上げ呼び掛けてきた人物を見上げる。
「何か用ですか?」
意外にもすぐ近くにいた男に、多少面食らいながらも返事を返す。
すぐ傍に立っていた男は、180cmを越える長身にスーツを身に纏いながら俺を見下ろしてきた。
顔は某俳優佐藤〇一に激似な俺の担任“長田光一”だ。
顔が渋く熱血漢の彼は生徒から密かに人気の教師だ。
「お前に少し話がある後で職員室に来なさい」
顔と完全にマッチした低い声で俺にそう言って、
長田先生は教室を出て行った。
まだ俺何も答えてないのに…
あの先生絶対俺のこと好きじゃねぇょ。
「はぁ~
しょうがない…行くか…」
自然と出てしまったため息と共に重い体を持ち上げて教室の入り口に向かった。
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