皇紀1125年3月

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当時、潮間少尉はまだ水兵長であった。彼は前線で陸兵隊の一員として働いた、橋頭堡の確保が主な任務だった。 戦争が終わった時に感じたのは勝利した充実感より、生き残れた安堵だった。彼がいた隊は前線に近かったせいで壊滅的な被害を受け、帰国後再編成を余儀無くされた。 その代わり、生き残りの兵達は下士官に昇進した。彼等は壊滅的被害を受けつつも任務を完遂した英雄だった。潮間水兵長は帰国後、特進を受け二等水兵曹に昇進し、並びに陸兵隊から水上勤務に配置転換された。 その後、順調に昇進を続け、26才の時、皇室試験に合格し、海軍兵曹長に。翌年少尉に累進し、27才で《安芸雨》の掌帆長として配置される。 彼のような例は稀だった。将校になりたいなら将校学校を出るのが手っ取り早いのに、わざわざ皇室試験を受けて兵から将校になるものは少ない(皇室試験を受けるだけでも十年以上の軍歴、及び分隊長指揮経験、航海術資格などがいる) そのため、彼は《安芸雨》首脳陣の中で一番軍歴が長かった。 →→→→→→→→→→→→→→ 交代です、少尉。と やって来た水兵にその場を任して、彼は下に降りる。掌帆をやっている水兵が目に入った。落ちるなよ、落ちても助けられないからな。と思いつつ、艦橋に向かった。
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