皇紀1125年3月

5/8

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
艦橋とはいえ駆逐船程度では小さく、一階は操舵室、二階は航海室、三階はそのまま露天に身を晒すため、実際は二階立てといっていい。 潮間が艦橋に入ると数人の少年達が目に入った。彼らは将校学校を卒業したあとに行われる二ヶ月半の航海実践の真っ最中である。 実際の所、この少年達は邪魔である。特にとりあえず最前線に出張っているこの船にとっては尚更だ。 「潮間少尉、見張り後でご苦労。だが君にはまだ付き合って貰わねばならない。食堂にきてもらおう」 船長直々にそう言われた潮間はげんなりとした。勿論それを顔には出さない。上官の命令は絶対的なものだ、たとえそれが、自殺行為の突撃でも。 →→→→→→→→→→→→→→ 食堂は中甲板、船内の中頃の位置にある。この下は機関―――帆走の補助機関である外輪―――を動かす蒸水機関の火釜があるだけだ。 「潮間少尉、君に頼みがある」 磯野大尉はまじまじと潮間を見た。26才、任官7年で大尉となったのは、名のある家の生まれだかららしい。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加