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桐壺の更衣は、とても美しくて可憐な方だったのに今はやつれてしまってます。心には帝との別れを悲しく思うのですが、言葉にもだせません。
帝も泣く泣くお約束をするけれど、桐壺の更衣はお返事さえすることが出来ないのです。
弱々しく、はななく、横たわっているばかりでした。
「死出の旅路にも、必ず二人で共にと固い約束を契ったのに、まさか私一人を置いて、去って行かれないでしょう。」
と泣き縋りなさる帝の心が、この上なく切なく、
「今はもうこの世の限り
あなたと別れてひとり往く
死出の旅路の淋しさに
もっと命の限り生きていたいのに……
こうなると前々から分かっていたなら…」
あまりの苦しさに力尽き、言葉が続きません。
帝は最期までしっかり見届けたいと思いになるのだが、
「今日から始めることになっていた御祈祷の支度を整え、僧たちが、すでに里で待っているのです。御祈祷は今夜からで」
と、しきりに急かすので堪らない気持ちのまま、今はどうしようもなく退出しました。
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