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「ここはあんた達みたいな者…つまり、死者の願いを叶える場所」
少年が言う。
「…死者の…願いを叶える…?」
そう繰り返す水野の声は震えている。
「じゃあ…やっぱり俺達は…
死んだのか?」
「ああ。正確に言えば、“99%”死んでる。
ここはあの世とは違うからな。」
「そんなことって…」
水野はまだ目を覚まさない鳴海見る。
「鳴海……」
鳴海から視線を逸らし、水野が俯く。
表情は読みとることが出来ない。
しかし、その手は震えていた。
「ショックなのはわかるけどさ、あんた俺の話聞いてた?」
そんな水野をみていた少年は、面倒くさそうに話を続ける。
俯いたまま返事をしない男に
少年は大きな溜め息をついた。
どれくらいの沈黙が続いただろうか。
「…願いを叶える、って言ったよな…?」
口を開いたのは水野だった。
相変わらず表情は分からないが、声に力が戻っている。
「ああ、そうだよ。」
「何でもいいんだな?」
そう言って少年を睨む。
その迫力に、少年は一瞬たじろいだ。が、少し目を閉じたあと、変わらない口調で話始めた。
「基本的にはなんでもいい。“家族に金をあげてくれ”だとか、“後世に名前を残したい”とか色々だ。
知り合いを“不幸にして欲しい”って奴もいたな。」
水野は少年から目を離さずに黙って聞いている。
「ただし、約束がある。」
少年の白く細い人差し指が伸びる。
「一つ、健全な魂であること。」
次に中指を伸ばす。
「一つ、『自分を生き返らせて欲しい』は出来ない。」
最後に薬指が伸びる。
「一つ、こちらの出す条件をクリアすること。
以上だ。」
少年は「で、どうする?」と水野に投げかける。
水野はしばらく少年をみていたが、やがてフッと力を抜いた。
「…大丈夫だ。」
そう呟くと
水野は笑った。
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