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それから5分ほど雑談をしていると、廊下の分かれ道から一人の研究員が分厚い紙の束を抱えてこちらに走ってくる。
「ごめん! ちょっとそこどいて!!」
「あ、あの!!」
自分達を通り過ぎようとするその研究員を呼び止める螺糸。
「え!? な、なに!?」
「すみません、お手洗いって……」
「ああ。それならそこの右の角曲がったら直ぐだから!!」
そう言うと研究員は先程とは違う研究室とおぼしきドアに消える。
「じゃあ行ってくる」
「あ、私も」
そうして二人は、先程研究員に教えてもらった道を進んでいった。
しかし、トイレどころかどんどん廊下は薄暗くなる。
「ね、ねえ刃ぁちゃん」
「うん。絶対ここ違う」
冷静に返答する白(つくも)に対し、螺糸(らいと)はわなわなと白の腕にしがみついて冷や汗を流している。
「ど、どうしよう……私道覚えてないよ?」
「私も……取り敢えず最初は右曲がったからまた右曲がればなんとかなるんじゃないかな?」
「え?でも一回左曲がっちゃったよ?」
「そうだっけ?じゃあ左」
そう言って左に曲がると、直ぐにまた曲がり角があった。
「たまに思うんだけど……刃ぁちゃんてさ」
「うん?」
「深いこと考えてない?」
「うーん……考えたことないかな」
「やっぱり……」
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