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「まあ……わかってたよ」
携帯をスカートのポケットにおずおずとしまう螺糸(らいと)。
「刃ぁちゃん戻ろ? 上に戻ればお父さんに連絡出来るよきっと」
次の瞬間、大袈裟なほど大きなサイレンが辺り一面に響き渡る。
「え!? なになになに!?」
「サイレンだね」
「それはわかるよー!!」
『未登録者が3ランク領域へ侵入しました。逃亡処置のためエレベーターを緊急停止いたします。研究員は所定の手順で予備ルートより問題の解決を急いでください。繰り返します――
なんだかヤバイ感じの放送まで流れ始める。
「刃ぁちゃんどーしよ!エレベーターってこれだよね!? 戻れなくなっちゃったよー!!」
慌てふためく螺糸に対し、いつもの調子を貫いて冷静に回りを観察する白(つくも)。
「放送で予備ルートって言ってたから、まずはそれ探そ? きっと上に出れるよ」
「さ、流石刃ぁちゃん……私今尊敬してる」
そしてその予備ルートを探す二人だったが、現実はそんなに簡単には行かなかった。
エレベーターを背中に左右に二つずつある扉を調べようにも、鍵が掛かっており開かず、残りは正面にあるセキュリティの付いた扉のみ。
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