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彼の名前は「淵夜叉終(ふちやしゃ おわり)」。
長めの純黒の髪が右目に隠れる感じに垂れてはいるが、端整な顔立ちの男。
感情兵器(エフェクトウェポン)の中でも最も危険視される存在「六無情」。
そんな六無情の内の一つ「無意識」を司る感情兵器を宿し、行使できるのが彼でありこの研究所に隔離されている理由。
しかし、危険視される程の破滅的力は研究者達にとっては恐ろしい程の魅力がある。
故に彼はここまでの待遇を約束され、何不自由なく生きているのだ。
そんな彼が今しているのは――
「……また風呂入んねぇと」
〝人を三人串刺しにしていた〟
どしゃっ、と重たい肉が床に崩れ落ちる音が広い広い空間に谺した。
この場所は感情兵器による実験を行う為に造られたコンクリート打ちっぱなしの部屋で、二つの対面する形に自動ドアがあり、蛍光灯が弱々しくその空間を照らしていた。
返り血を浴びてしまった淵夜叉は自分の体に付いた血を見ながら顔をしかめる。
するとあの独特なマイクのスイッチをオンにしたときのブツッという音が耳にはいる。
『いやいや。今日もお疲れ様淵夜叉君。今日はもう休んで結構だよ』
一方的にそう告げるとスイッチをオフにする音と同時に対面の研究員用の自動ドアから数名の研究員がアーマーと呼べるほど大掛かりな装備で三人の死体と血の清掃を淡々とこなし始めた。
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