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淵夜叉(ふちやしゃ)もその様子を見るまでもなく、振り替えって自室に繋がる自動ドアへゆっくり歩き出す。
そこでふと、今朝見た占いの事が頭を過る。
淵夜叉は立ち止まり、首だけ動かして研究員用の自動ドアに目を向ける。
「退屈な日常を一変させてくれる素敵な出逢いがありそう……ねぇ」
一つ嘆息を漏らすと、止めていた足を再び前に動かし、自室ドアが開いて自室に繋がる廊下を歩き始める。
「人を殺す毎日ってのは、確かに〝退屈な日常〟だな」
そう小さく呟きながら白い殺風景な長い廊下を進んでいった。
現在5月23日、午前10時53分。
まだまだ一日は始まったばかりである。
同日、午後1時12分。
東京のとある宗教系の学院、2年生のあるクラス。
そのクラスに美少女がたった一人で昼飯の弁当を淡々と食べていた。
彼女は「白刃雅音(つくも はがね)」。
日本人の父とイギリス人の母の間に生まれ、母からは綺麗な金髪と綺麗な碧眼、童顔の綺麗な顔と抜群のスタイルを完璧に受け継ぎ、父からは冷静で静かな性格と運動神経とセンスを受け継いだ完全なる絶世の美少女だ。
揺れる長い金髪をポニーテールに結っていて、常に水色の小さい羽飾りの付いた髪止めと5年前に事故で亡くなった父が誕生日にくれたペンダントを着けている彼女には――
〝友達が一人しか居ない〟。
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