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何を言われているのか、理解するのに時間がかかったような気がする。
私が立夏と過ごすことが多くなればなるほど、加藤は文句が減った代わりに、もともと多くない口数すら減っていた。
その分、ふとした視線を受けることが増えていることに気付いてはいた。
立夏が彼に向ける眼差しと、良く似ていたからだ。
何かの拍子で視線が合うと、私はそっとそれの軌道を変えた。神経をそちらに貼り付かせたまま。
「なんで? 嫌いじゃないけど」
「そんなふうに、見えたよ」
それは、私じゃなくて立夏だ。
彼女がその視線を彼の体に注ぐたび、私はそれに気づいてしまう。それくらいに明らかで、それだけちょっと寂しかった。
どこの誰かもわからない人間を部屋に受け入れる人は普通はいない。
他人を自宅に連れてくる居候を、居座らせることのできる人だって多くはない。
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