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   冷たいのか、無関心なのか、それとも気付かない振りをしているのか。  とりあえず突っ込みたいのが、彼女はこの町のこの時期には、とんでもなく寒々しい格好をしているはずということなのだが。  コートどころか上着すら着ていない。あまりに体によろしくない。  現在の気温は一度。寒いよ。 「どうして、ここにいる?」 「歩いていたら、そんな時間だったから、ちょっとだけ待ってみようと思った」  加藤の問いに、彼女は鼻にかかった声で答えた。  いくら恋人でもなんでもない相手だからって、こういう言葉を交わす人たちの間に入っているのは堪らなく窮屈で、なんだか誤解をされそうな構図だなあ、なんて思いながら、私はちょっとだけ二人から身を引いて、あんまりそっちを見ないようにしてぼんやり宙を眺めていた。  こんな時に、じゃあ私帰りまーす、とか言って、そそくさと去ることができれば良いのだけれど、どうも私は空気を読もうとしてタイミングを外したり場を固まらせたり、逃げられる場面で捕まったりする人間らしい。  ついと腕を引かれた感触に視線を巡らせれば、立夏が私の袖を摘まんでにっこりしていた。  
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