遠い思い出

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「知らないのか?海斗は死んだんだよ」「…」 「15年前に」 「15年前?俺が海斗兄に会った後に死んだのか?本当に?」 「知らなかったのか?」 「あっ、いや、知らなかったわけじゃない。風の噂では聞いていた。けど、信じられなかったんだ。海斗兄がしくじるわけがないんだから」 「しくじってなんかないよ!盗みには成功したんだ。けど…」 声を精一杯に絞り出し、叫ぶように私は答えた。 震える声と手と身体を精一杯抑えながら… それを見ていたロイが、私の言葉を続けてくれた。 「見つかってしまったんだよ。盗みに成功して、その場から立ち去ろうとしたら、銃で撃たれたんだ」 「銃?」 「ああ。海斗兄さんが嫌っていた銃で。あいつに!」 私は胸に手をあてがい、ネックレスのトップを握りしめ、気持ちを落ち着けながら答える。 が、兄さんを撃った奴の顔を思い出すとどうしても、言葉が強くなってしまう。 「銃か…海斗兄、ホント、嫌ってたもんな、銃」 「ああ」 「だから、この街で銃をぶっ放す奴が居たら俺達街のもんが許さないってこった。葉月は、一人で遠い街からここにたどり着いたし事情を聞けば、虫けらのように殺されたって言うじゃねぇか。小さい葉月は、必死に耐えていたさ。涙をな…」 「…」 ロイは私を眺めながらキルトに話を続けていた。 私はまだビンを持つ手が震えるのを抑えるので精一杯だった。 「俺も、以前は盗みをしていた。その時は、何のためらいもなく銃を使って好き放題していたんだ。けど、葉月が来てから仲間で考えてな…銃は便利だが、人の命を簡単に奪ってしまえる。人を殺してまで、盗みに入る事はないんじゃないかってね。それなら、俺たちが今までやってきたり、見てきたりした事を、世の中にいる同業者に教えてやれる街を作るのもいいんじゃないかって事になって、ビクター街を作ったんだ。そしたら、駆け出しや年期の入った盗み屋が集まり、それぞれの情報を交換し出したんだよ」 「ロイには本当に感謝している。私一人の為だけに、生き甲斐にしていた稼業を辞めさせてしまい、おまけに小さい私まで…本当に…」 「葉月。何度も言っているだろ?俺達は俺達の考えで、こうしようって決めたんだって」 「うん…分かってる。分かってるけど…」 「気にするな。お前のせいじゃない。なんなら、今から街の俺の仲間を集めて聞いてみるか?」
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