旅立ち

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「う~ん…今日はこの水で体、拭けそうだね」 「そうだな」 私は肩越しに覗き込んでいるあすかに答え微笑んだ。 彼女も笑いながら水に触った。 盗み屋の旅は村から村へ一週間以上かかる時もあり、その間は宿に泊まることも出来ず野宿。 天候などによりテントを張ることがあるけれど今の時期は夜もあまり冷える事がなく過ごしやすい春の気候。 焚火をしてその傍で夜を明かす。 「葉月、計画はどうするの?」 荷物をある程度ほどき終えたあすかが聞いてきた。 「う~ん…どうするかな。村の守り宝だから、きっとどこかの屋敷に保管されているだろうから忍び込むか…」 「屋敷に潜り込む」 「ああ。そのどちらかだな」 私は答えながら川の上流を眺めた。 川の先にはアリーナ村が見える。 あと半日もあれば村に入る事が出来るだろう。 そこからが問題だった。 村にあるというだけで、保管場所などは買った情報の中に入っていないからだ。 「屋敷に潜り込んだほうが仕事はやりやすいよね?」 「ああ。けど、うまく潜り込めるかどうか…小さい村だからな、街とは違って簡単にお手伝いで潜り込めないだろうし」 「それなら、商人として屋敷に入れてもらったほうがいい?」 「それが一番かもな」 「そうだね。えっと…手元にある高価な商品は…」 あすかはリュックの中を覗き込み売れるものを探し始めた。 私達は、街を出るときに必ずしている事がある。 それは、『道中必要な物や仕事に欠かせないものを必ず購入する』ことだ。 道中に必要な物は水や食料、着替えなどだが仕事に欠かせないものは変装用の服や売り物など。 これは仕事の仕方が、『忍び込んで時間もお金もかからないようにしてお宝をいただく場合』と『時間もお金もかけて様子をみながらお宝を頂く場合』の2パターンあるからだ。 今回は時間としてはそんなにかからないだろうけど、小さい村だし情報量も少ない。 嗅ぎまわればすぐによそ者だとばれてしまう可能性がある。 それらを考慮して怪しまれないように入り込むには商人が一番なんだ。 「よし。出来そうだよ」 「それじゃ、その手でいこう」 「了解です」
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