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あすかはそういうと荷物を片づけて食事などの準備に取り掛かった。
私は焚火をするために辺りの小枝や枯れ葉・枯れ草を集め、地面に穴を掘る。
そこに集めたものと火をつけたマッチを放り込む。
あすかは準備が出来るのを待っていたかのように小川で汲んできた水を沸かし始める。
フッと辺りを見渡すと暗闇が迫っていた。
そして東の空から半月が顔を出し周囲の景色をわずかに照らす。
目の前では小枝がパチパチと音をたてながら燃え、炎はユラユラと揺れている。
それは私自身を見ているようでもある。
兄を殺した張本人の手がかりが何も得られないもどかしさと内にあるやり場のない怒り・憎しみ。
そして15年という歳月にも関わらず何の情報も得られない人物“ダーク”。
今なお存在するのか しないのかさえ分からず闇に包まれたままの“あいつ”。
「葉月、夕飯出来たよ」
「…ああ」
目の前に差し出されたあすか特製の雑炊と魚の缶詰。
料理上手の彼女は野菜の入った物や魚の身をほぐしたものなどを入れて雑炊を様々にアレンジしてくれる。
お互いに料理のアイディアを出し合いながら飽きが来ないように工夫をしている。
「今日は、野草を使ってみました」
「何の野草?」
「小川の近くにセリがあったからそれをいれてみたの」
「なるほど。いい香りがする」
「でしょ?」
あすかは得意げに笑って見せた。
野宿の醍醐味は自然にあるものを利用して料理が出来る事。
体に毒だったりするものもたくさんあるが、不安な時は街に行って観てもらうことも視野に入れて採取するようにしているんだ。
食事を終えた私たちは小川で汲んできた水を火で少し温め、タオルで汗だけを拭って交代で夜を明かすことにした。
あすかの寝息を聞きながら火が消えないように小枝を放り入れる。
私は静寂の中、炎を見つめながら少し昔を思い出していた。
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